Wednesday, March 07, 2018

彫刻の明日を知るための補助線


藤井匡『風景彫刻』(阿部出版、2018年)


<風景をモチーフとした彫刻作品の分類、整理や静物と風景の分岐点についての検討、また、野外彫刻における環境と風景についての考察などを中心に、多角的な視点から論じている。>


第1章 風景をモチーフとした彫刻

第2章 人体と風景の二重イメージ

第3章 静物と風景の分岐点

第4章 奥行きとしての彫刻空間

第5章 野外彫刻における環境と風景


風景絵画なら聞くが、風景彫刻という言葉は知らなかった。立体の彫刻作品の限られたスペースに風景を作り込むことは難しいからだ。しかし、彫刻家は、さまざまな工夫を凝らして、風景彫刻の世界を実現してきた。

本書で著者は、山本正道、福岡道雄、伊東敏光、中西信洋、北郷悟、中ハシ克シゲ、角文平、大井秀規、成田克彦、小清水斬、藤原彩人、長谷川さち、谷山恭子、中原祐介、茂木美里、戸谷成雄、神山明、若林奮、市川平らの多数の作品を元に、風景彫刻の生成と発展を描き出す。

第1章は風景彫刻の定義と簡潔な歴史で或。第2章から第4章が各論であり、3つのフェーズで風景彫刻の可能性を追求している。第5章は著者の得意の野外彫刻を風景彫刻との対比で論じている。

現代彫刻の不思議さと変転の中に、主題や素材とともに、風景彫刻という分野が生成し、彫刻の可能性を拡大していることがわかる。同時にそれが現代彫刻のアキレス腱にならないように、注意が必要との問題意識も示されている。こうして著者は彫刻の明日に向けて、まだ誰も引いたことのない補助線を刻み込んでいく。

著者は東京造形大学准教授で、主著に『現代彫刻の方法』『公共空間の美術』がある。


CHIVAS REGAL 12. Papillon Roquefort. そして、するめ。