Tuesday, July 18, 2017

自主規制メディアを卒業するには

斎藤貴男『国民のしつけ方』(インターナショナル新書)
http://i-shinsho.shueisha-int.co.jp/kikan/010/
<政権による圧力、メディア側の自主規制
あなたも知らないうちにすり込まれている。
政権による圧力だけではない。マスメディアの過剰な自主規制も報道を大きく歪めている。その有様は、国民をしつけるために巧妙に仕組まれているかのようだ。知る権利を守るため、我々にできることは何か。具体的な方策を探る>
メディアと権力の関係が、権力による圧力以前に、メディア側の自主規制や忖度によって特徴づけられる日本――何度も指摘されてきたことだが、改まるどころか、いっそうその度合いを深めてきたように見える。
森友・加計事件ではメディアも健闘している面があるが、世界一の発行部数を誇る読売新聞は報道機関ではなく、権力の広報誌として、足を引っ張る最低の紙面づくりに精を出している。イエロー・ジャーナリズムの本領発揮だ。
報道の自由度72位の日本の状況を検討した著者は、あなたも知らないうちにすり込まれている、と注意を喚起する。
一方でマスメディアの荒廃があり、他方でネット上の無秩序と野放図な虚偽記載があり、信用も信頼も失われた現状で、市民はどうするべきなのか。
著者は調査報道と「番犬ジャーナリズム」とメディア・リテラシーを唱える。
また、新聞に対する軽減税率問題、記者クラブ問題、SLAPP訴訟にも触れつつ、「価値観宣言」を呼びかける。
この種の議論はずいぶん長く続いているが、フリーのジャーナリスト、企業内ジャーナリスト、研究者によって、それぞれ主張に差異が生じることも知られたとおりである。
圧倒的に社会に影響を与える企業内ジャーナリストが改革に動かないと状況の改善は見込めないが、フリーのジャーナリストや研究者や市民が声を上げ続けるしかない。