Wednesday, August 17, 2016

ヘイト・クライム禁止法(122)パキスタン

パキスタン政府が人種差別撤廃委員会90会期に提出した報告書(CERD/C/PAK/21-23. 26 November 2015)。
パキスタンには人種主義団体は存在しない。宗教的又は民族的理由に基づく憎悪を促進する団体を禁止する法律についての情報を報告する。1997年の反テロリズム法によれば、宗派的憎悪の煽動は犯罪である。それは、暴力の煽動や、国民的、人種的、宗教的憎悪又は暴力による行為を含むテロリスト行為に関する犯罪である。個人による犯罪だけでなく、団体の関与によるテロリスト行為も犯罪である。
ヘイト・スピーチに対処する努力を行っている。パンジャブ州では新しい州法が採択され、違反者や拡声器の誤用に対処する。実際に多数の逮捕がなされている。
報告書の対象期間に、憎悪文書の出版に関連して全国で1777以上の事件が記録され、1799人が逮捕されている。パキスタン司法当局は、多数の憎悪文書を押収している。
2002年のプレス・新聞・報道機関・出版登録法第5条A(b)は、宗派主義、民族性、人種主義に基づいた声明、コメント、観察、意見の印刷表現物の出版を制限している。2007年の電子メディア規制庁命令によって規制範囲が強化された。同命令は、電子メディアプログラムに暴力、テロリズム、人種的民族的宗教的差別、宗派主義、好戦主義、憎悪を含まないように指示している。命令違反に対して、命令第33条が刑罰を定めている。
宗教団体間に敵意を促進すること、そうした目的で犯罪を行うこと、そうした活動に参加することも犯罪である。
人種差別行為に対して刑罰が科された事例は多数ある。先例としては、ザーラ対内務大臣事件がある。ハザラ共同体に属する女性とその娘にCNICを更新することを拒否した事案である。裁判所は、CNICの発行を命じただけでなく、補償として5000ルピーを払うよう命じた。裁判所は、地方行政官にハザラ共同体に対する偏見があるとし、憲法はこの種の差別を禁止しているとした。

ハザラ人は、アフガニスタン中央部に居住する民族で、外見が東アジア的であり、この地のパシュト人やタジク人とは明確に異なる。このためアフガンで差別されているが、パキスタンにも共同体があるようだ。人種差別撤廃委員会での審査に際しても、委員がハザラ人への差別について質問していた。