Monday, August 08, 2016

「不機嫌な時代」の暴走を止めるために

内田樹・姜尚中『世界「最終」戦争論――近代の終焉を超えて』(集英社新書)

オビには「ふたりの知の巨人が提示する新世界の見取り図!」とある。戦争、内戦、テロを始め21世紀の野蛮に目もくらむ現状を改善するために、歴史を問い返し、近代の国民国家体制が液状化しているとし、「疑似戦時体制」(日常生活の中に忽然と出現する「戦争」=テロリズム)を生きているわれわれの課題を探る対談である。国民国家解体の後の世界の帝国化を危惧し、グローバリズムとは「棄民」思想である都市。日本の支配層は「日本のシンガポール化」という倒錯した構想に突き動かされているという。「不機嫌な時代」の暴走を止めるための思索である。
細かな点はともかく、大筋の流れはそれなりによく理解しながら読める。歴史の転換期を理解するためには一度、風呂敷を広げて大状況を確認する必要があるというのも、納得だが。フランスがこれほどテロにあうのは、西欧における自由の祖国だからだという。
フランスがイスラム圏に戦争を仕掛け、現に戦争(一方的な空爆)を続けているからではないのだろうか。
モンロー主義はアメリカの一国主義(孤立主義)だという。アメリカとヨーロッパの相互不干渉主義ではないのだろうか。欧州諸国に中央アメリカ・南アメリカに介入させない、つまり南北アメリカをアメリカ合州国の庭とする発想ではないのだろうか。