Saturday, November 28, 2015

ファシズムと闘う9人の男たち

『「開戦前夜」のファシズムに抗して』(かもがわ出版、2015年)
山口二郎「安倍的全体主義はどこから来て、どこへ行くのか」
想田和弘「『熱狂なきファシズム』に抵抗するために」
熊野直樹「『管理ファシズム』と現代日本政治」
成澤宗男「『日本会議』のルーツと国家神道」
森達也「多くの歴史的過ちは、こうして始まった」
白井聡「安倍首相とは何者なのか」
木村朗「『民主主義を装ったファシズム』の危機に直面する日本社会」
海渡雄一「原ファシズムの兆候を呈す安倍政権の排外主義と言論統制」
河内博史「『民族根絶やし』の危機」
政治学者、映画作家、政治家、弁護士など、それぞれの立場から日本政治に批判的に向き合い、発言してきた9人の男たちの最新の文筆の闘いである。本書企画を立案した木村朗は私と共編で『21世紀のグローバル・ファシズム』(耕文社)を出したが、続いていくつもの出版企画を立て、ファシズムの現在を解き明かす理論的営為を続けている。『21世紀』では、執筆者に男女をそろえ、日本人のみならず朝鮮民族や琉球民族の執筆者を選んだが、本書は日本人男性ばかりである。ジェンダーバランスが悪いが、私が次に予定している本も男ばかりなので人様のことをとやかく言えない。日本政治に責任を負う日本市民としての発言なので日本人ばかりにしたのかもしれない。

執筆者たちの問題意識は完全に共通であるが、分析視角や方法論はそれぞれ異なる。「安倍的全体主義」「熱狂なきファシズム」「管理ファシズム」「民主主義を装ったファシズム」といった認識が相互にいかなる関係にあるのかは必ずしも明らかではない。重なり合っているところもあれば、ずれるところもあるようだ。一つひとつの記述を見ていくと、異論のあるところも目立つことになるが、何よりも本気で安倍的現在と闘う9人の努力に敬意を表したい。