Tuesday, July 21, 2015

Shall we 会議じゃないが

周防正行『それでもボクは会議で闘う』(岩波書店)
4月初旬に出たが、ようやく読んだ。当時の報道では、法務省が強引に推進した「新時代の刑事司法制度特別部会」答申に周防正行や村木厚子も賛成したことが報じられていたため、「なんだ中途半端な妥協をしたのか」と、やや肩透かしの思いもあって、本書を買ったものの読まずにいた。しかし、今回読んでみて、周防正行と村木厚子が、人権無視の警察官僚、屁理屈だらけの法務官僚、無責任極まりない御用学者たちを相手に、人権擁護とあるべき刑事裁判実現のために奮闘し、素晴らしい闘いをしていたことを確認できた。
拷問、拷問まがいの陵虐、人権審議、自白強要、長時間取調べ、黙秘権侵害による強制自白、誤判、冤罪の山にもかかわらず、一切反省しない警察官僚と法務官僚に刑事司法改革ができるはずがない。犯罪者に改革を委ねるのは笑い話でしかない。それでも、官僚相手に取調べの可視化を求め、人質司法の改革を求め、人間らしい社会を求める周防と村木の努力は貴重だ。頭が下がる思いだ。最後に周防は「なぜボクは妥協したのか」と題し、最後の会議の様子を伝える。なるほど妥協しているが、単なる妥協ではない。最大限の努力を積み重ねた末に、次の改革に向けた一歩を踏み出すために余儀なくされた妥協である。

周防が間違っているのは、警察官僚、法務官僚、司法官僚、御用学者を「専門家」「法律家」と呼んでいることだけだ。彼らは屁理屈と人権侵害の専門家であり、責任逃れと税金泥棒の専門家に過ぎない。人権を擁護した刑事司法の担い手の資格のないインチキ集団である。国際人権法の最低限の要請ですら一顧だにせず、市民の自由と人権を貶めることしかしない偽専門家が権力を握って好き勝手にやっているのは、日本だけと言うわけではないが、本当に情けない。