Saturday, July 25, 2015

ヘイト国家と闘う高校生


月刊イオ編集部編『高校無償化裁判――249人の朝鮮高校生たたかいの記録』(樹花舎)
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ここ数年、日本社会ではヘイト・スピーチが社会問題となってきたが、在日朝鮮人をはじめとする外国人の人権擁護のために活動してきた立場から言えば、第1に、ヘイト・クライム、ヘイト・スピーチはずっと以前から長期にわたって続いてきた現象であって、ザイトクによって始まったわけではない。第2に、ヘイト・クライム、ヘイト・スピーチの主犯は、ネット右翼ではなく、日本政府である。文部科学省が朝鮮学校潰しのために、どれほど差別に専念してきたかを見れば明らかである。
高校無償化における朝鮮学校差別は、文部科学省と自民党政治家の連係プレーの下、強行されてきた。これは悪質な差別であるが、差別一般ではなく、差別を煽るヘイト・スピーチである。文部科学大臣や文科官僚の発言が繰り返し大きく報道されてきたが、これは政府が「朝鮮人は差別してもよい」と大々的に宣伝して来たのであって、文科省や自民党は紛れもないヘイト団体である。ヘイト国家が「差別のライセンス」を発行し、社会において堂々と朝鮮人差別が行われる。国家公認、国家煽動によるヘイト・スピーチである。
それゆえ、国際人権機関から何度も是正勧告が出ている。2010年の人種差別撤廃委員会、2013年の社会権規約委員会、2014年の人種差別撤廃委員会から、日本政府に対して差別是正の巻勧告が出されてきた。しかし、朝鮮学校差別にアイデンティティを見出しているヘイト団体が勧告を履行することはない。
本書は、差別是正を求める高校生、元高校生、教員、父母たち、そして弁護士や支援の会の人々の共同による、ヘイト国家による差別つとの闘いの記録である。多くの知り合いが写真つきで登場するので、楽しく読める1冊だ。

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目次

「高校無償化裁判 249人の朝鮮高校生~たたかいの記録」もくじ
●無償化裁判って? きほんのQ&A
●第1章 無償化の始まりから省令改悪まで
1 ドキュメント 朝鮮学校はこうしてはじかれた
2 朝鮮学校排除し無償化がスタート、迷走する審査
3 安倍政権の発足と省令改悪
4 国連からも是正勧告   
●第2章 2013年、無償化裁判闘争へ
1 無償化裁判は、愛知、大阪から
2 省令改悪後は広島、九州でも
3 首都東京でも、東京朝高生62人が国賠訴訟
4 論点すりかえる日本政府
5 補助金裁判も闘う大阪、府と市を提訴
6 座談会 民族教育の権利、裁判闘争でどう勝ち取るか      
●第3章 無償化差別と日本社会
1 朝鮮学校支援の全国ネットワーク
2 無償化実現、補助金復活運動の現場
3 海を越え広がる支援の輪
4 無償化とメディア
●第4章 民族教育をめぐる権利闘争の歩み
1 194549年 産声上げた朝鮮学校、吹き荒れる弾圧の嵐
2 50年代 受難の時代を経て、新たな出発と発展
3 6070年代 法的認可の獲得、「外国人学校法案」、広範な闘争で廃案に
4 8090年代 進む社会的認知、各方面で差別是正
5 2000年代~ 変わらぬ差別と排除の論理、闘いの中で新たな支援の形も
6 在日朝鮮人の民族教育権とは何か―無償化問題が突きつける課題
●資料
東京無償化裁判訴状

無償化問題に関連し、国連人権条約審査委員会から出された総括所見など