Monday, April 27, 2015

ヘイト・スピーチ研究文献(17)表現の自由を確保するためにヘイトスピーチを規制する

和田義之「いま一度ヘイトスピーチ規制について」『青年法律家』530号(2015年)
「ヘイトスピーチが社会問題となって数年以上、法律家は何らの処方箋も示さず、延々と議論のみ続けてきている。そこには、マジョリティであることからくる想像力の限界、もしくは余裕のようなものがあるのではないだろうか」と指摘する著者は「マイノリティはこの状況に疲れ果てている。加害者らに対して疲れ果てているのではなく、むしろ味方だと思っていた人権派の人々を説得するのに疲れ果てているということだ。『加害と被害の非対称性』について語られるとき、その『加害』には我々法律家も含まれている」と言う。実に重要な指摘である。
もう一つ引用するべき重要な指摘がある。
「表現の自由を確保するためにヘイトスピーチを規制するという考え方がありうる。集団に対する侮辱によって自己評価を貶められたマイノリティは、社会に対して異議申し立てを行う気力を失う。ヘイトスピーチによって、マイノリティの表現の自由が阻害される状態になるのだ。かかる状態を是正するために、つまりマイノリティの表現の自由を回復させるために、集団に対する侮辱表現を規制するという考え方は可能である。」

著者は、ヘイト・スピーチの現場での調査や被害者からの聞き取り体験をもとにこのような結論に到達したようである。これは私の主張と全く同じである。私は、人種差別撤廃委員会の議論に学んで、同じ結論に達した。今後、この議論をさらに進めていく必要がある。