Sunday, March 15, 2015

ヘイト・スピーチ研究文献(10-7)「真実・正義・補償に関する特別報告書」の紹介(7)

7 訴追戦略の設計における被害者参加

 特別報告者によると、移行期司法への被害者参加の重要性が強調されるようになってきた。国際人権法と原則は、司法メカニズムへの被害者の参加、特に司法へのアクセスや実効的な補償の権利を規定している。被害者の特別な地位を国際レベルで認知することは、被疑者・実行者の基本的権利と被害者の権利の間のバランスを修復するという国際共同体の集合的意思である。国際刑事裁判所のような国際法廷や、カンボジア特別法廷やセネガル特別法廷、東ティモール特別法廷のようなハイブリッドの国際的法廷の諸規程に被害者参加の規定が置かれたことは、被害者を刑事手続きの中心に据え直すことである。

 参加には多様な形態があり、判決形成に直接かかわる形態から、情報提供などの間接的形態までさまざまである。捜査開始から判決言渡しや補償手続きまでの諸段階がある。

被害者参加を強調するべき理由には次のようなものがある。
(a)    被害者参加は、被害者が権利の担い手であることの承認が含まれる。これにより被害者は公的領域での空間が手にできる。
(b)    参加は真実への権利を強化する。
(c)     被害者参加の方法を定式化すれば、被害者が手続き開始だけでなく、証拠収集などにも重要な役割を果たすことが明らかになる。
(d)    参加は、被害者が従来単に証人としてのみ位置づけられてきたのに対して、手続きにおける重要な役割を与えられることになる。
(e)     刑事司法における参加は、真実追求や補償など他の移行期司法にも手続きを統合できる。
(f)     参加によって被害者がエンパワーされ、再発防止策にもつながる。
 

なお、パブロ・デ・グリーフ特別報告者は、二〇一二年から国連人権理事会の「真実、正義、補償、再発防止保障の促進に関する特別報告者」である。二〇〇一年からニューヨークで「移行期司法のための国際センター」研究局長であった。その前はニューヨーク州立大学哲学准教授で、倫理学と政治理論も教えていた。民主主義、民主主義理論、道徳・政治・法の関係に関する研究をし、著作を公表し、移行期司法のための国際センターで関連著書を出している