Wednesday, March 25, 2015

ヘイト・スピーチ研究文献(11-2)被害実態調査について

元百合子「不特定多数に対するヘイト・スピーチの被害――実態調査で分かったこと」『IMADR-JC通信』181号(2015年)

ヒューマンライツ・ナウが2014年に行った実態調査の紹介である。著者はヒューマンライツ・ナウ関西グループの一員としてこの実態調査を行ったメンバーである。

著者は最後に次の様に述べている。
「以上の調査結果から浮かび上がるのは、不特定多数に対するヘイト・スピーチが悪質な人権侵害でありながら、被害は調査も救済もされないまま放置されている現実である。社会の不均衡な力関係の中で優位にあるマジョリティがヘイト・スピーチの自由を保障されてマイノリティは恐怖と屈辱の中で沈黙を強いられている。国連の勧告に従って、『断固として対処するための具体的な措置を速やかにとること』が強く求められる。マイノリティには差別されない権利、表現の自由を含めてすべての人権を平等に保障される権利、尊厳を尊重されて生きる権利があり、政府はそれを実効的に保障する義務を負っているのである。」


著者は「マジョリティがヘイト・スピーチの自由を保障され」ている現実を批判している。日本政府及び憲法学の「定説」は文字通り「ヘイト・スピーチの自由」を主張してきた。しかも、それが「日本国憲法上の権利」であるという異様な解釈である。憲法学の「定説」なる解釈は完全に間違っているが、間違いを示すためにも被害実態調査が重要である。