Friday, April 18, 2014

ヘイト・クライム禁止法(73)リヒテンシュタイン(2)

ヘイト・クライム禁止法(70)では、2005年の政府報告書を紹介した。今回は、2012年報告書である。リヒテンシュタイン政府が人種差別撤廃委員会に提出した報告書(CERD/C/LIE/4-6. 14 February 2012)は、前回審査における委員会の勧告を受けて記載されている。                                                                                     警察は、人種主義団体が存在すると認知していないが、海外で活動する集団と連絡を取り合っている人物に関する情報を保有している。人種主義者や右翼過激派の人物が参加する集会を阻止・解散させた。二〇〇七年、右翼過激思想の持ち主がクラブハウスの経営を禁止した。その団体の構成員は逮捕され、刑事施設拘禁の執行猶予判決を受けた。                                                              リヒテンシュタインに右翼ポピュリスト政党はない。しかし、二〇〇九年の研究によると、右翼過激派の三〇~四〇名ほどのサークルがあるが、顕著なリーダーはいない。警察と検察がこの集団を慎重に監視している。政府が任命した暴力保護委員会は、教育や文書記録化の具体的計画を設定している。                                                                                                        二〇一一年三月、政府は右翼過激派に関する最初の報告書を出した。報告書には、リヒテンシュタインにおける右翼過激派現象に関する包括的文書が含まれ、事件発生日、対抗措置、背景情報、若者の集会に関する情報が収められている。                                                                                               前回報告以後、人種差別とつながりのある刑事事件は二三件報告されている。二〇〇七年には前述のクラブハウス閉鎖、二〇〇八年にはフェスティヴァルにおける大衆の喧嘩騒動、二〇〇九年と二〇一〇年にはトルコ人店舗に対する三件の放火事件があり、罰金と刑事施設収容が言い渡された。                                                                                                                                          二〇〇四年から二〇一〇年の統計が紹介されている。人種主義的差別者の事件は、二〇〇四~〇六年には報告が四件、手続き開始が二件、判決は〇件、二〇〇七年には報告が四件、手続き開始が一件、判決は一件、二〇〇八年には報告が三件、手続き開始が一件、判決が一件、二〇〇九年には報告が六件、手続き開始が二件、判決が一件、二〇一〇年には報告が六件、手続き開始が二件、判決が一件である。                                                                                               人種差別撤廃委員会はリヒテンシュタイン政府に次のように勧告した(CERD/C/LIE/CO/4-6.23 October 2012)。刑法第二八三条一項が人種差別を促進・煽動する団体の構成員となることを犯罪としているが、人種主義団体を禁止する法律がないことに関心を有する。委員会の条約第紙上に関する一般的勧告一五号(一九九三)を呼びかけ、条約第四条に従って人種主義を促進する団体を禁止する法律を制定するように勧告する。