Thursday, March 20, 2014

ヘイト・クライム禁止法(66)フィジー

 フィジー政府報告書(CERD/C/FJI/17. 10 January 2007)によると、ヘイト・スピーチや先住民族フィジーの優越性の主張に対処する措置を取っている。一九九七年の憲法第三〇条は表現の自由の規定だが、その制約も明示している。憲法第三〇条二項(b)によると、法律によって表現の自由を制約できるのは、他人の名誉、プライヴァシー、尊厳、自由権を保護・維持するためになされる場合である。それにはヘイト・スピーチからの自由の権利the right to be free from hate speechが含まれる。ヘイト・スピーチは憲法第三八条において、いかなる形態であれ、憲法第三八条に記述された理由に基づいて差別を促進し、又は促進する効果を有する表現と定義されている。                                                                                    フィジーは、条約第四条の要請する立法措置が世界人権宣言と条約第五条の考慮のもとで行われると考えている。政府は、人種的優越性又は憎悪に基づく観念を流布する団体、暴力行為、そのような行為の煽動に反対している。このような団体は非難され、法律によって抑止される。                                                                                           公共秩序法第一七条は「人種的敵対の煽動」を次のように規定する。「(1)話された又は読まれるべき言葉によって、標識によって、又は目に見える表象その他によって、次のような言説を広めること。(ⅰ)人種又はコミュニティに対する人種的好悪又は憎悪を煽動する、(ⅱ)異なる人種やコミュニティ間の敵対感情や悪意を助長すること、(ⅲ)公共の平穏を損なうこと。(2)自分のもの以外の人種やコミュニティに関して、その構成員に恐怖、警告又は不安感を引き起こすような傷害や脅迫の言説を行うこと。(3)軍人、警察官、刑事施設職員に暴力を煽動し、法律に従わないことや不法秩序を助言する言説を行うこと。以上の行為は、一年以下の刑事施設収容又は五〇〇ドル以下の罰金、又は両者の併科とする。」                                                                                                                                                                  刑法第六五条は「煽動的意図」を、例えば「人に憎悪又は侮辱を引き起こすこと又は不満を亢進させること」としている。                                                                                                                                      二〇〇一年八月二〇日、フィジー高裁は、リオギ事件について、煽動的意図を公正でリベラルな精神で解釈すれば、憲法が保障する表現の自由に抵触しないと判断した。自由で民主主義的な社会においては、政府が開かれた批判にさらされるのは当然である。政治的な検閲がなされてはならないことも当然である。政府は、政府に対する民主的批判に対して煽動法を適用すべきでないと考えている。過激団体であっても、その政治的意見を理由にして活動制限をするべきではなく、団体構成員が犯罪を行った場合に訴追が可能となるという。                                                                                                                                              人種差別撤廃委員会はフィジー政府に次のように勧告した(CERD/C/FJI/CO/17.16 May 2008)。現行刑法は条約第四条に関連する法律であるが、委員会はフィジー政府が人種主義団体の禁止に反対し、人種主義的理由の犯罪について刑罰加重事由としていないことに関心を有する。報告書が差別事件に関する統計を示していないことは残念である。委員会は条約第四条が示す線に沿って追加立法を行うよう強く勧告する。人種的憎悪と憎悪の煽動に関する統計データを報告するよう勧告する。