Saturday, March 22, 2014

ローザンヌ美術館散歩(2)

去年行ったときは「MAKING SPA----------CE」という現代映像アート展をやっていた。                                                       ローザンヌ美術館散歩                                                                                         http://maeda-akira.blogspot.ch/2013/11/blog-post.html                                                                                        今回は「ジャコメティ・マリーニ・リシエル――苦悩する身体」だった。ポスターはもちろんジャコメティの歩く人だ。                                                                                                   アルベルト・ジャコメティ(1901~66年)はスイスを代表する彫刻家で、100フラン紙幣に作品が印刷されている。グラウビュンデンのスタンパ生まれでジュネーヴの美術学校を経てパリで学ぶ。アントワーヌ・ブーデルのもとで学ぶ。1929年、コクトーらと出会いシュルレアリスムの影響を受け(1935年まで)、1941年にはサルトル、ボーヴォワールに出会う。戦争中はスイスに戻り、マリーニ、リシエルらと感化しあう。戦後は世界的な彫刻家として名をはせた。                                                                                                                            マリノ・マリーニ(1901~80年)はイタリアの彫刻家だ。トスカナの生まれで、フローレンスの美術学校を経てパリで学ぶ。戦中に爆撃でアトリエを破壊され、スイスに逃れ、ジャコメティやリシエルと感化しあう。                                                                                                               ジェルメーヌ・リシエル(1902~59年)はフランスの女性彫刻家で、ブーシェ・デュ・ローヌのブラン生まれ、モンペリエの美術学校を経てパリで学ぶ。ジャコメティと同様アントワーヌ・ブーデルに学んだ。ブーデルの弟子であるスイス人彫刻家オットー・ベニンガーと結婚。戦中はジャコメィ、マリーニと感化しあうとともに、クーノ・アーミエ、ジャン・アープ、ル・コルビュジェ、マックス・カガノヴィチと切磋琢磨。戦後はチューリヒやパリで活躍。                                                                                                                      ジャコメティの独特の彫刻は誰でも一目でわかる。と思っていたら、以前、同僚の彫刻家から「ジャコメティに影響を与えた女性彫刻家がいる。素人ならジャコメティと区別がつかないかもしれない」と教わったことがある。それがジェルメーヌ・リシエルのことだった。たしかに区別がつきにくい。初期にはドガやマイヨールの影響を受けていたのが、やがてあえてバランスを欠いた作品になり、身体を断片化し、極端にデフォルメし、ついには線状化していく。きっかけはシュルレアリスムだが、3人ともシュルレアリスムから離れて、どんどん突き進んでいく。マリーニの「乗馬」は、馬も人間も折れ曲がり、単純化され、時には逆さまになっていく。ジャコメティの人間は線状化し、脱人間化していく。リシエルの人間も線状化し、昆虫化していく。巨大なバッタやカマキリの姿をした人間である。3人の作品が一堂に集められ、対比しながら見ることが出来る。「苦悩する身体」――まさに虐げられ、折り曲げられ、震え、苦悩する身体だ。                                                                                                                       帰りに受付・売店でアリス・ベイリーのカタログを見つけた。去年、アリス・ベイリーを見たくてローザンヌに来たのに、現代映像展だったので作品はないし、カタログもなかった。今回も作品を見ることはできなかったが、カタログが1冊だけ置いてあったので買ってきた。アリス・ベイリー(1872~1938年)はジュネーヴ生まれの女性画家で、キュビスムや未来派を通り抜けて独特の作品を多く残した。油彩とは別に毛糸を用いた作品、華やかな女性像が多い。