Wednesday, October 30, 2013

ヘイト・クライム禁止法(39)ポーランド

拷問禁止委員会に提出されたポーランド政府第5・6回報告書(CAT/C/POL/5-6. 15 November 2012)にヘイト・クライムの法と政策に関連する記述があるので、簡潔に紹介する。『ヘイト・クライムとの闘いに関する法執行官プログラム(LEOP)』が2006年以来実施されている。プログラムは内務省が組織し、欧州安全協力機構(OSCE)民主的制度・人権局の協力で、警察で実施されている。2008年9月、スルプスカの警察学校で「反差別・警察フォーラム」が開催され、警察及び、マイノリティ団体代表やNGOからも参加した。プログラムは2つの内容。1つは、警察官のための多面的な教育訓練システムで、2009年9月、警察の指揮官レベルに行われた。中央レベルで、トレーナーのためのヘイト・クライムと闘う5日間の専門コースである。専門コースは、4種類のコースとなっているが、50人の警察官が受講した。もう1つは、警察専門家、OSCE専門家、NGOなどが講師となる、地方レベルの1日訓練で、警察官対象である。ポーランド各地で行われ、これまでに2万人の警官が受講した。さらに、『ヘイト・クライム――トレーナーのためのガイドライン』を出版した。他方、2007年、「差別と効果的に闘うための検察官の役割」というプロジェクトを立ち上げ、人種、民族的出身、宗教、宗派、年齢、性的志向に基づく差別と闘う検察官育成を行い、ワークショップに240名の検察官が参加した(以上、報告書58~59頁、パラグラフ263~270)。差別の予防に関連して、現在、刑法改正の議論をしている。刑法草案119条「その国民、民族、政治又は宗教的意見の故に、又は宗教的信念がないことの故に、並びに、性別、ジェンダー、年齢、障がい又は性的志向に基づいて、人の集団、又は特定個人に対して、暴力を用い、又は不法な脅迫を行った者は、3月以上5年以下の自由剥奪刑に処する」。刑法草案256条「ファシストまたはその他の全体主義国家システムを公然と促進し、又は、国籍、民族的出身、人種、宗教ないし宗教的信念のないこと、性別、ジェンダー、年齢、障がい又は性的志向における差異を理由に、憎悪を煽動し、流布し、又は侮辱した者は、罰金、自由制限罰、又は二年以下の自由剥奪刑に処する」。刑法草案257条「その国民、民族、政治又は宗教的意見、宗教的信念のないこと、の故に、並びに、性別、ジェンダー、年齢、障がい又は性的志向、あるいは他人の神聖不可侵性を侵害するその他の理由に基づいて、人の集団又は特定個人を公然と中傷した者は、三年以下の自由剥奪刑に処する」(以上、報告書88頁、パラグラフ432)。