Sunday, September 29, 2013

ヘイト・クライム禁止法(38)

国連人権理事会24会期に提出された「アフリカ系人民に関する専門家作業部会報告書」(A/HRC/24/52)の付録として、イギリス訪問調査報告書(A/HRC/24/52/Add.1. 5 August 2013)がある。2012年10月に、ミレイユ・ファノン・マンデス・フランス、ミリヤナ・ナイセフスカ、ヴェレーヌ・シェパードがイギリスを訪問して調査した結果である。ヘイト・クライムに関する記述を紹介する。2010/11年に検察局が把握した中で、最も共通するタイプは、人に対する犯罪44.2%、公共の秩序に対する犯罪37.6%である。被告人の多数は25~59歳の白人イギリス男性である。被害者は男性58.3%、15%は性別不明。多くはアフリカ系の難民申請者だが、その集団に対する加害は報告されない例も多い(つまりもっと多いはず)。メデチィアにおけるレイシズムの主な問題は特定集団に対する消極的ステレオタイプである。イギリスにはメディア苦情委員会があり、編集者実務綱領もある。インターネットにおけるレイシズムが増えている。捜査や立証が困難である。イギリスの裁判所は、インターネットは公共の秩序法にいう公共空間と認めている。2012年3月、ある学生が、アフリカ系フットボール選手に関してツイッターに攻撃的投稿をして56日の拘留となった事例がある。イギリスは7つの国際人権文書を批准しているが、移住労働者家族権利保護条約は批准していない。人種差別撤廃条約14条の個人通報を受容していない。レイシスト・プロパガンダとレイシスト団体の禁止に関する条約4条については、表現の自由との関係で解釈宣言をしている。人種差別撤廃委員会は2003年と2011年にこの見解の見直しを勧告した。2010年のUPRでも同様の勧告があった。イギリスにおける関連法規は、2010年の平等法であり、1965年の人種関係法に遡る。イギリス政府によると、2010年平等法は、それまでの反差別法を簡明にし、調和的にするものだ。直接差別、間接差別、ハラスメントも射程に入れている。職場における不公正な処遇に対処している。ただし、ヘイト・スピーチ法という観点では、弱い。イギリスにおけるヘイト・クライムについて詳しくは師岡康子論文参照。