Tuesday, September 10, 2013

国際政治経済予測と対応する戦略提案

中野剛志『日本防衛論――グローバル・リスクと国民の選択』(角川SSC新書)                                                          「異能の官僚が描く壮大な新国家戦略の全貌」だそうだ。2050年までを射程にした国際政治経済予測を立てて、それに対応する戦略を論じているので、たしかに。もっとも、日本に何ができるかと問いを立てているが、あまり何もできないという答えのように読める。とおあれ、大胆な予測と分析の本で、それなりに楽しめる。著者は良く勉強している。「異能の官僚」というのは、最近よく目につくような気もする。元官僚で、研究熱心で、さまざまな分野で活躍している評論家は多い。著者は『TPP亡国論』(集英社新書)で話題になったようだが、読んでいないので、良くわからない。その後も『日本破滅論』『官僚の反逆』『日本思想史新論』と、新書を量産しているようだ。元京都大学准教授。なぜか元で、いまは評論家とのこと。本書はかなり舎弟の広い議論で、国際経済が中心なので、なんとも論評する能力がないが、それなりにおもしろい。グローバル・リスクに対処する戦略が必要な時代なのに、日本にはそれが欠落しているという。なるほどと思う。2012年11月段階で、日本経済のリスクシナリオとして想定するべきことは、ユーロ危機、アメリカの景気後退、新興国の構造不況、地政学的変動、気候変動、地殻変動の6つであり、これらの的確な分析に基づいた対処を呼びかけている。これもなるほどと思う。原発再稼働を呼びかけたり、日本核保有のシナリオを論じたり、血気盛んな若手評論家という事だろうか。2050年を見据えたおみくじ占いの一つ一つにコメントする能力はないが、危機は常に外からやって来るという議論の仕方に違和感がある。日本は素晴らしくて、何も問題はないのに、外からリスクが押し寄せて来るから対処しないといけないが、いまの日本政府や日本人はその準備ができていないと批判している。でも、本当の危機は中からくるものではないだろうか。