Sunday, August 18, 2013

近代立憲主義のやさしい入門書

伊藤真『憲法問題――なぜいま改憲なのか』(PHP新書)                                                                                             なぜPHPなのかなどと呟きながらも成田空港の書店で購入してきて、読んだ。著者は、言うまでもなく「伊藤塾塾長」である。                                                                                           「そもそも憲法とは何か? 憲法の本質から、自民党改憲案を考える」と宣伝しているとおり、自民党改憲案を批判的に検討している。新書1冊で、よくここまで丁寧に書けるものだと、著者の力量に改めて感心した。文章は平易な語り口で、自民党改憲案の問題点が基本からちゃんとわかるようにできている。                                                                                                 「人権が軽視されて、国民に義務を課す憲法に」「憲法に大きな期待をかけてはいけない」「96条改正は会見の裏口入学だ」「天皇を戴く国家が日本の伝統化?」「奴隷の幸せでいいのか」「新しい人権は、人権もどきにすぎない」「檻から出たライオンは、自分で檻に戻らない」。                                                                                                                     何と言っても、「そもそも憲法とはなにか?」「憲法の本質」にかかわる、立憲主義の説明が巧みになされている。改憲問題は、近代立憲主義をしっかりと踏まえて議論しないと、イデオロギーの空中戦に陥りかねない。本書は、立憲主義とは何かを、簡明にわかりやすく書いている。読者は、立憲主義をきちんと把握して、そこから自民党案と、著者の見解を対比して、自分で判断することができるだろう。