Wednesday, June 26, 2013

ヘイト・スピーチ集団に公共施設を利用させてはならない3つの理由

地方公共団体が管理する公共施設を、ヘイト・スピーチを行ってきた人種差別集団に利用させ便宜を図ることは、人種差別撤廃条約に違反する。                                            これまでに「◯◯人を殺せ」などと過激な人種差別・人種主義の煽動を行ってきたことで有名なヘイト・スピーチ団体が公共施設の利用を申請した場合、公共施設側はこれを却下するべきであるか、という問題である。                                                                 仮に下記のような条例に基づいて設置された公共施設について検討する。                                                   http://www2.pref.yamagata.jp/Reiki/402901010025000000MH/402901010025000000MH/402901010025000000MH.html                                                                                             第1に、条例第1条は「県民の生涯にわたる学習活動を総合的に支援し、地域の活性化を担う人材の育成及び県民の文化の振興を図るため、◯◯県生涯学習センター(以下「センター」という。)を置く」と、目的を定めている。この目的に明らかに反する活動に対して利用を認めるべきではないから、この目的に明らかに反する活動に対して利用申請を却下することは当然である。そして、条例第3条は「知事は、センターの使用の目的、方法等が次の各号のいずれかに該当するときは、許可をしてはならない」として、次の3つを掲げる。(1)公益を害するおそれがあるとき。(2)センターの管理上適当でないと認めるとき。(3)その他センターの設置の目的に反すると認めるとき。このうち(1)については、公益を害することを明確に証明する必要があり、その現実的危険性が明確でない場合に利用を却下することはできない。(2)(3)についても、そのように判断する根拠を明確にする必要がある。過激な人種差別・人種主義の煽動を行ってきたことで有名な団体の活動であっても、それが室内で平穏に行われる限りは、(1)の要件を満たさない場合がありうる。しかし、(2)(3)の要件を満たしていると判断できる場合がある。当該団体構成員が、ある外国人学校に押し掛けて異常な差別街宣を行い、裁判所による有罪判決が確定している場合。当該団体構成員が人権博物館に押し掛けて差別街宣を行い、裁判所による損害賠償命令が確定している場合。当該団体構成員が、ある企業に押し掛けて特定民族の女優をCMに使うなと強要行為を行い裁判所による有罪判決が確定している場合。たとえば、以上の要件を満たす場合、県は当該団体による公共施設利用申請を許可してはならず、却下するべきである。                                                                              第2に、人種差別撤廃条約第2条に基づいて、日本政府は人種差別を撤廃するために「すべての適当な方法により遅滞なくとることを約束」し、「いかなる個人又は団体による人種差別も後援せず、擁護せず又は支持しないことを約束」している。さらに、「すべての適当な方法により、いかなる個人、集団又は団体による人種差別も禁止し、終了させる」ことを約束している。それゆえ、日本政府(当然のことながら県も含む)は、過激な人種差別・人種主義の煽動を行ってきたことで有名な集団を後援、擁護、支持してはならない。従って、県は、そのような差別集団に便宜を図ってはならず、公共施設の利用を認めてはならない。                                                                                           第3に、人種差別撤廃条約第4条本文に基づいて、日本政府は「一の人種の優越性若しくは一の皮膚の色若しくは 種族的出身の人の集団の優越性の思想若しくは理論に基づくあらゆる宣伝及び団体又は人種的憎悪及び人種差別を正当化し若しくは助長することを企てるあらゆる宣伝及び団体を非難し、また、このような差別のあらゆる扇動又は行為を根絶することを目的とする迅速かつ積極的な措置をとることを約束」している。日本政府は人種差別撤廃条約第4条(a)(b)の適用を留保しているが、 第4条全体の適用を留保しているわけではないので、人種差別撤廃条約第4条本文に基づいて検討を行い、県条例第3条(2)(3)について判断するべきである。それゆえ、日本政府は、「人種差別を正当化し若しくは助長することを企てるあらゆる団体を非難」するべきであり、「このような差別のあらゆる扇動又は行為を根絶することを目的とする迅速かつ積極的な措置をとる」べきである。従って、県は、そのような差別集団に便宜を図ってはならず、公共施設の利用を認めてはならない。                                                                                                  結論として、日本政府や県が、そのような差別集団に便宜を図り、一般の施設よりも安価・利便性のある公共施設の利用を認めた場合、それは人種差別撤廃条約に違反するものである。このようなことはあってはならない。                                                                                                      なお、日本国憲法第21条は、表現の自由の一つとして、集会、結社の自由を保障しているので、いかなる集団にも集会、結社の自由があり、それゆえ、いかなる集団であっても公共施設の利用を認められるべきだとの主張がなされるかもしれない。しかし、これは形式論だけを根拠にした詭弁にすぎない。日本国憲法第13条の人格権、第14条の法の下の平等といった基本的な価値理念を否定する人種主義集団の集会の自由や結社の自由などというものを、日本国憲法は保障していない。国際人権法も、そのような差別集団の結社の自由を認めず、むしろ団体解散を命じるのが原則である(人種差別撤廃条約第4条b)。                                                                                                          ***************************************                                                                                          人種差別撤廃条約第2条                                                                                                 1  締約国は、人種差別を非難し、また、あらゆる形態の人種差別を撤廃する政策及びあらゆる人種間の理解を促進する政策をすべての適当な方法により遅滞なくとることを約束する。このため、                                                                             (a)各締約国は、個人、集団又は団体に対する人種差別の行為又は慣行に従事しないこと並び に国及び地方のすべての公の当局及び機関がこの義務に従って行動するよう確保することを約束する。                                                                                                      (b)各締約国は、いかなる個人又は団体による人種差別も後援せず、擁護せず又は支持しない ことを約束する。                                                                                                     (c)各締約国は、政府(国及び地方)の政策を再検討し及び人種差別を生じさせ又は永続化さ せる効果を有するいかなる法令も改正し、廃止し又は無効にするために効果的な措置をとる。                                                                                                             (d)各締約国は、すべての適当な方法(状況により必要とされるときは、立法を含む。)により、いかなる個人、集団又は団体による人種差別も禁止し、終了させる。                                                                                                                                    (e)各締約国は、適当なときは、人種間の融和を目的とし、かつ、複数の人種で構成される団体及び運動を支援し並びに人種間の障壁を撤廃する他の方法を奨励すること並びに人種間の分断を強化するようないかなる動きも抑制することを約束する。                                                                                                                人種差別撤廃条約第4条                                                                                                                        締約国は、一の人種の優越性若しくは一の皮膚の色若しくは種族的出身の人の集団の優 越性の思想若しくは理論に基づくあらゆる宣伝及び団体又は人種的憎悪及び人種差別(形態のいかんを問わない。)を正当化し若しくは助長することを企てるあらゆる宣伝及び団体を非難し、また、このような差別のあらゆる扇動又は行為を根絶することを目的とする迅速かつ積極的な措置をとることを約束する。このため、締約国は、世界人権宣言に具現された原則及び次条に明示的に定める権利に十分な考慮を払って、特に次のことを行う。(a)(b)省略