Friday, August 03, 2012

ライフスタイルを刷新する思考

グランサコネ通信120803

Grand-Sacconex News. 3 Aug 2012



❉坂口恭平『独立国家のつくりかた』(講談社現代新書、2012年)



著者が本当に独立国家をつくったわけではない。独立国家のつくりかたが書いてあるわけでもない。



しかし、「独立国家のつくりかた」というタイトルを付しているのは、民主主義を破壊し、国民の命と暮らしを無視し、物質のみ「豊かな」社会を目指し続ける現在の日本政府に対する異議申し立てと同時に、そうした異常な国家のもとで不平たらたら言いながらも変革をあきらめ、展望を抱けずにいる人々に対して、違った思考がありうること、違ったライフスタイルがありうることを、具体的に示しているからである。天下国家の大きな話を、一人ひとりの市民が実践的に何をなしうるのかというレベルで編みかえながら、次のステップを目指す形で説いている。



著者は、建築家・作家・絵描き・踊り手・歌い手と称しているが、「家を建てない建築家」であり、建築批判に精を出す建築家である。これまでに『0円ハウス』『TOKYO0円ハウス』『隅田川のエジソン』などの著作がある。34歳と若いが、新政府の内閣総理大臣でもある。



「ゼロから生活のことを、住まいのことを、己の人生のことを考える。それこそが僕が考える『芸術』だ、そんな具体的なことを考えること、『量』を知ろうと自らの体験でもって試みること。そこに『技術』が生まれる。生まれた『技術』はお金を稼ぐためのものじゃない。まわりの人間たちに伝えたい『贈与』となる。」



本書は結構話題になっていたようなので、どうしようかと思いつつも、実際に独立国家をつくったわけではないから、わざわざ購入することもないかと思いながら開いたページに次の1行があり、う~むと唸って購入した。文脈を抜きに1行引用。



「もっと物事を単純に考える癖を身につけよう。そうしないと社会の複雑さには対応できない。」



34歳でこういう文章を書くのはいったいどのような人間なのか、と思って購入したが、面白い本だ。確かに、考えるためのヒントがいっぱい詰まっている。



でも、「0円ハウス」の著者なのに、本書は本体760円(税別)。これはどういうことだ(笑)。