Saturday, October 15, 2011

川上武志『原発放浪記』

川上武志『原発放浪記――全国の原発を12年間渡り歩いた元作業員の手記』(宝島社、2011年)


http://tkj.jp/book/?cd=01853501



著者は、1980年代にプラント建設会社から派遣されて原発作業員として、美浜、伊方、福島第一、玄海などで働き、一時はタイに行っていましたが帰国後、2003年から5年間、今度は浜岡で働いて、合計12年間、原発で働いたそうです。



「放射性物質が発する熱が壁にも床にも染みついていて、本当に窒息しそうになる。匂いはないと言うけれど、高放射線エリアで働いたことのある私は、放射能の発するいやな匂いを嗅いだことがある。錯覚と言われても、嗅いだとしか思えないのだ。/それに、高放射線エリアには独特の空気の濃さがある。放射能は眼では見えないが、この空気の濃厚さ、濃密さが我々労働者の体に危険を教えてくれる。その空気に包まれた瞬間、体が警報を発する。「逃げろ!」と教えてくれるのだ。」



こうした記述がいたるところにあり、現場を知らない私たちに想像させてくれます。特に第1章の高放射線エリア突入は生々しいです。目次を見るだけでも、孫請けのさらに下請けの労働者がどういう現場でどういう扱いを受けて、被曝させられているのかがわかります。搾取、ピンハネ、名ばかりの安全教育、偽装請負、身代りホールボディチェック、不当解雇・・・



著者はいまは原発労働をやめて、浜岡の脱原発の運動とも連絡を取っているようです。中部電力との交渉の様子もわかります。



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まえがき

1章 高放射線エリアへの突入
 放射性物質の発する「熱」と「匂い」
 安全教育という名のマインドコントロール
 刺青者も集まってきた美浜原発の定検工事
 トンデモ作業員と美しすぎる燃料プール
 福島第一原発での除染作業
 ほか

2章 放浪生活から原発へ
 原子力発電所での経験はあるんかね?
 寮生活での家族的な待遇
 ボタ山のある風景
 初仕事は四国の伊方原発
 飯場さながらの宿舎生活
 ほか

3章 「浜岡原発」下請け社会
 会社を退職してタイに渡る


 昔の仲間からの思いがけない電話
 原発労働者と結婚
 雇用保険も健康保険もない雇用契約
 作業現場は管理区域の通称「ゴミ課」
 ほか

4章 原発労働者の生活
 浜岡原発前のじゃぱゆきさん伝説
 中古のパソコンを購入してホームページを始める
 ハイキングと富士登山
 1カ月半の失業宣告
 原発労働者の習性
 ほか

5章 解雇、籠城、ガン
 雇用保険への加入を求めたら「解雇通告」
 会社の寮で1カ月余り籠城する
 ガン発症と労災申請
 不当解雇される派遣労働者
 5万円の日当がピンハネで8000円に